A4の宇宙

数学と物理をA4ノートに収まる範囲で。

xが0に近い時のsin xの性質 マクローリン展開を用いる方法

導出

以前導出した \sin xのマクローリン展開を書き下す。このマクローリン展開は無限の収束半径を持ち、本質的に \sin xと等しいのであった。

\begin{eqnarray} \sin x = x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5-\frac{1}{7!}x^7+\cdots \end{eqnarray}

 x \neq 0として両辺をxで割る。

\begin{eqnarray} \frac{\sin x}{x} = 1-\frac{1}{3!}x^2+\frac{1}{5!}x^4-\frac{1}{7!}x^6+\cdots \end{eqnarray}

両辺の \displaystyle \lim_{x \to 0}を取る。

\begin{eqnarray} \require{cancel} \lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} &=& \lim_{x \to 0} \left( 1-\frac{1}{3!}x^2+\frac{1}{5!}x^4-\frac{1}{7!}x^6+\cdots \right) \newline &=&\lim_{x \to 0} \left( 1-\cancel{\frac{1}{3!}x^2}+\cancel{\frac{1}{5!}x^4}-\cancel{\frac{1}{7!}x^6}+\cancel{\cdots} \right) \newline &=&1 \end{eqnarray}

すなわち、x0にとても近い時、 \displaystyle \frac{\sin x}{x}1に収束する。

しかし、x=0ちょうどの時は、分母と分子が両方とも0になってしまって \displaystyle \frac{\sin x}{x}の値が定まらず、成り立たないことに注意。

この計算に意味あるの?

この計算は、三角関数微分に必要な知識 \displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} =1を導出するためのものである。

しかしよく考えると \sin xマクローリン展開する時点ですでに三角関数微分を使用してしまっているので、循環論法になってしまって意味がない。

そのため多くの場合、扇形の面積弧の長さを用いた幾何的な手法で \displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} =1を導出する。

しかしながら、幾何的な導出こそが循環論法であるとする流派もある。(円の面積をちゃんと計算するために積分が必要だから、そこで \displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} =1を使わないといけないよ派)

その流派では、\sin xは図形と無関係にマクローリン展開形式で定義されることになる。(これは導出ではなく定義なので、三角関数微分は必要ないという理屈) \begin{eqnarray} \sin x = x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5-\frac{1}{7!}x^7+\cdots \end{eqnarray}

この場合、最初に \displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} =1を知ることができるのは今回の手法になるのである。

参考 https://sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/~kawanaka/sinx.pdf

民主主義は三択に弱い

背景

最近ブレグジット問題がアツい。イギリスがEU離脱を決定したものの、その離脱プロセスが決まらず、締め切りだけが迫っている状況なのだ。

 

締め切りが来ると何も決まってないのに強制的にEU離脱となって大混乱を招くという。一体何故こんなことになってしまったのだろうか。

 

以下、モデル化してブレグジット投票の流れを追う。

 

イギリスの有権者3パターン

大体以下の3パターンに分かれている。

  • EU残留派 40%「EUに残留したい、離脱絶対反対!」
  • ソフト離脱派30%「EUからは離脱したいけど、ちゃんと交渉に沿ってやる」
  • ハード離脱派30%「EUから離脱したい!交渉で妥協とかしない!」

 

支持率の数値は適当なので注意。モデル化上、重要な所は以下の2点にある。

  • どの派閥も単独では過半数を取れない
  • 離脱派を合計すると過半数を超える

 

また国民投票と議員による投票があるのだが区別していない。

 

投票

1回目

「イギリスはEUから離脱することにしますか?」

  • EU残留派 40%「No!」
  • ソフト離脱派30%「Yes!」
  • ハード離脱派30%「Yes!」

離脱賛成60%で過半数。離脱が決定した。次は具体的な方針を決めよう。

 

2回目

EUと妥協点を探って離脱する計画を作りました。でもEUの影響は残るかも…これで良い?」

  • EU残留派 40%「離脱したくないからNo!」
  • ソフト離脱派30%「Yes!」
  • ハード離脱派30%「手緩いからNo!」

反対70%で過半数。ソフトブレグジットしないことが決定した。

 

3回目

「じゃあ問答無用で離脱することにする?」

  • EU残留派 40%「離脱しないって言ってるだろ!No!」
  • ソフト離脱派30%「無茶苦茶すぎるだろ!No!」
  • ハード離脱派30%「Yes!」

反対70%で過半数。ハードブレグジットしないことが決定した。

 

4回目

「分かった。ホントは離脱したくなかったんだろ?国民投票をもう一度やろう?」

  • EU残留派 40%「それだ!Yes!」
  • ソフト離脱派30%「No!」
  • ハード離脱派30%「No!」

反対60%で過半数。再投票しないことが決定した。

 

なぜこんなことに…

つまり3択で、自分の意見とぴったりでないとNo投票する、というルールで投票を行うと、全て否決されてしまって永遠に何の結論も出なくなってしまう。

 

また、今回は3パターンの別れかたが、「強賛成」「弱賛成」「反対」だったことが問題を危険にしている。「賛成派」自体は過半数を超えているので、取り消すこともできずに時間だけが過ぎてしまったのだ。

 

日本の場合

例えば大阪都構想はこれと近い動きをしているが、層の別れ方が異なったのでセーフだった。

  • 「維新の会も大阪都構想も好き」30%
  • 「維新の会は好きだけど都構想は嫌」30%
  • 「維新の会も都構想も嫌」40%

の三層がいるので、

 

維新の会が選挙で勝つ!

大阪都構想や!

アカン!票が足らん!これは解散しかない…

解散後の選挙でまた維新の会が勝つ!

これは大阪都構想待ったなしや!

 

の繰り返しが発生してしまう。維新の会は普通に人気があるので、都構想投票に失敗した後も選挙で勝ってしまうのだった。

 

しかしこれは都構想賛成派が過半数いないため、つまり「賛成」「弱反対」「強反対」に分かれたため、グルグル回るだけでイギリスみたいな決定的な問題にはならなかった。

 

最後はどうするのか?

メイ首相(ソフト離脱派)は「相手の思うツボですよ作戦」を取っていくのではないか?

 

残留派には「時間切れになったら結局ハードブレグジットになっちゃいますよ?」

 

ハード離脱派には「このままモタモタしてたら離脱延期しかないですよ。その間に流れが変わって再投票になったりするかも?」

 

と脅しをかけて、ソフト離脱派プランに同意するようプッシュするという作戦なのでは。

 

これがうまく行くかはもう政治家の力量と妥協の世界なのでどうなるのかは俺程度では分からないのだった。(ゲーム理論とかにあるのかも知れないけど)

 

指数表記された三角関数の手触りを確かめる

前回までに、オイラーの公式を用いて三角関数を指数関数形式で表せることを示した。

 

この形式でも三角関数としての性質が保たれていることを、いくつかの代表的な性質から確認する。

 

 \sin x \cos xの指数関数表記を再度書く。

\begin{eqnarray}
\sin x&=&\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}
\end{eqnarray}

 

\begin{eqnarray}
\cos x&=&\frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2}
\end{eqnarray}

 

 

 \sin 0 =0を確かめる。

左辺を変形して右辺を目指す。

\begin{eqnarray}
\sin 0&=&\frac{e^{i0}-e^{-i0}}{2i}\\&=&\frac{1-1}{2i}\\&=&0
\end{eqnarray}

合っている。

 

 

 \cos 0 =1を確かめる。

左辺を変形して右辺を目指す。

\begin{eqnarray}
\cos 0&=&\frac{e^{i0}+e^{-i0}}{2}\\&=&\frac{1+1}{2}\\&=&1
\end{eqnarray}

合っている。

 

 

 \sin^2 x+ \cos^2 x=1を確かめる。

左辺を変形して右辺を目指す。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
\sin^2 x+ \cos^2 x&=&\left(\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}\right)^2+\left(\frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2}\right)^2\\
&=&\frac{e^{2ix}-2+e^{-2ix}}{-4}+\frac{e^{2ix}+2+e^{-2ix}}{4}\\
&=&\frac{\cancel{-e^{2ix}}+2-\xcancel{e^{-2ix}}}{4}+\frac{\cancel{e^{2ix}}+2+\xcancel{e^{-2ix}}}{4}\\
&=&1
\end{eqnarray}

合っている。

 

 

 (\sin x)'=\cos xを確かめる。

左辺を変形して右辺を目指す。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
( \sin x)'&=&\left( \frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i} \right)'\\
&=&\frac{i e^{ix}+i e^{-ix}}{2i}\\
&=&\frac{\cancel{i}e^{ix}+\cancel{i}e^{-ix}}{2\cancel{i}}\\
&=&\frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2}\\
&=& \cos x
\end{eqnarray}

合っている。

 

 

 (\cos x)'=-\sin xを確かめる。

左辺を変形して右辺を目指す。

\begin{eqnarray}
( \cos x)'&=&\left( \frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2} \right)'\\
&=&\frac{i e^{ix}-i e^{-ix}}{2}
\end{eqnarray}

分子と分母にiをかける。

\begin{eqnarray}
(\cos x)'&=&\frac{-e^{ix}+e^{-ix}}{2i}\\
&=&-\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}\\
&=& -\sin x
\end{eqnarray}

合っている。

 

 \sin 2x=2 \sin x \cos xを確かめる。

今回は右辺を変形して左辺を目指す。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
2 \sin x \cos x&=&2 \cdot \frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i} \cdot \frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2}\\
&=&2 \cdot \frac{e^{2ix}-e^{2ix}}{4i}\\
&=&\frac{e^{2ix}-e^{2ix}}{2i}\\
&=&\sin 2x
\end{eqnarray}

合っている。

 

 \sin (a+b)=\sin a\cos b+\cos a \sin bを確かめる。

今回は右辺を変形して左辺を目指す。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
\sin a\cos b+\cos a \sin b &=&\frac{e^{ia}-e^{-ia}}{2i} \cdot \frac{e^{ib}+e^{-ib}}{2}+\frac{e^{ia}+e^{-ia}}{2} \cdot \frac{e^{ib}-e^{-ib}}{2i}\\
&=&\frac{e^{i(a+b)}-\cancel{e^{i(b-a)}}+\xcancel{e^{i(a-b)}}-e^{-i(a+b)}}{4i}+\frac{e^{i(a+b)}-\xcancel{e^{i(a-b)}}+\cancel{e^{i(b-a)}}-e^{-i(a+b)}}{4i}\\
&=&\frac{2e^{i(a+b)}-2e^{-i(a+b)}}{4i}\\
&=&\frac{e^{i(a+b)}-e^{-i(a+b)}}{2i}\\
&=&\sin (a+b)
\end{eqnarray}

合っている。

 

代表的な三角関数の性質が、指数関数表記でも成り立っていることが確かめられた。

オイラーの公式から導かれる三角関数の記法

概要

オイラーの公式を受け入れると三角関数を別の形式で表せる。

 

導出

オイラーの公式を再度書く。

\begin{eqnarray}
e^{ix}=\cos x+i\sin x
\end{eqnarray}

 

式中のx-xに置き換えてみる。 

\begin{eqnarray}
e^{-ix}&=&\cos (-x)+i\sin (-x)\\
&=&\cos x-i\sin x
\end{eqnarray}

 \cos xは偶関数なので変化しない。 \sin xは奇関数なのでマイナスが付く。

 

マクローリン展開版の表記でも確認しておく。まず元の形。

\begin{eqnarray}
e^{ix}&=&\left(1-\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4-\cdots\right)+i\left(x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5-\cdots\right)\\
\end{eqnarray}

 

式中のx-xに置き換えてみる。

\begin{eqnarray}
e^{-ix}&=&\left(1-\frac{1}{2!}(-x)^2+\frac{1}{4!}(-x)^4-\cdots\right)+i\left((-x)-\frac{1}{3!}(-x)^3+\frac{1}{5!}(-x)^5-\cdots\right)\\
&=&\left(1-\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4-\cdots\right)-i\left(x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5-\cdots\right)
\end{eqnarray}

実部にはxが偶数次の項しかないので変化しない。虚部には奇数次の項しかないので結局虚部全体にマイナスが付き、同じ結果が得られた。

 

この結果を踏まえてe^{ix}+e^{-ix}を計算する。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
e^{ix}+e^{-ix}&=&(\cos x+ i \sin x)+(\cos x-i\sin x)\\
&=&\cos x+ \cancel{i \sin x} + \cos x-\cancel{i\sin x}\\
&=& 2 \cos x
\end{eqnarray} 

 

 \cos xについて式変形する。

\begin{eqnarray}
2 \cos x&=&e^{ix}+e^{-ix}\\
\cos x&=&\frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2}
\end{eqnarray}

\cos xの新たな記法が導かれた。

 

 

同様にe^{ix}-e^{-ix}を計算する。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
e^{ix}-e^{-ix}&=&(\cos x+ i \sin x)-(\cos x-i\sin x)\\
&=&\cancel{\cos x}+ i \sin x -  \cancel{\cos x}+i\sin x\\
&=& 2i \sin x
\end{eqnarray} 

 

 \sin xについて式変形する。

\begin{eqnarray}
2i \sin x&=&e^{ix}-e^{-ix}\\
\sin x&=&\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}
\end{eqnarray}

\sin xの新たな記法が導かれた。

オイラーの公式

概要

これまでに\sin x \cos xマクローリン展開を導出してきた。

 

 \sin xマクローリン展開
\begin{eqnarray}
\displaystyle \sin x=x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5-\frac{1}{7!}x^7+\cdots
\end{eqnarray}

 \cos xマクローリン展開 
\begin{eqnarray}
\displaystyle \cos x=1-\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4-\frac{1}{6!}x^6+\cdots
\end{eqnarray}

 

これらを用いてオイラーの公式 e^{ix}=\cos x+ i \sin xを導く。

 

導出 

 \cos x + i \sin xマクローリン展開

これらを用いて複素数平面の極座標表示、 \cos x+ i \sin xを書き直してみる。ここでi虚数単位、すなわち2乗すると-1になる数である。

\begin{eqnarray}
\cos x + i \sin x&=&\left(1-\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4-\cdots\right)+i\left(x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5-\cdots\right)\\
&=&1+ix-\frac{1}{2}x^2-\frac{i}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\frac{i}{5!}x^5-\cdots
\end{eqnarray}

実数と虚数を区別せず、昇べきの順に並べなおした。

 

この形は以下に再掲するe^xマクローリン展開によく似ている。

\begin{eqnarray}
\displaystyle e^x&=&1+x+\frac{1}{2}x^2+\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\frac{1}{5!}x^5+\cdots\\
&=&\sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{n!}x^n
\end{eqnarray}

 

しかし全く同じではない。 \cos x + i \sin xの方では、

  1. 2項ごとに項の正負が入れ替わっている。
  2. xが奇数次の項に虚数単位iが掛かっている。

という2つの違いがあることが分かる。

 

しかし、結局これらは同じことを説明している。すなわち以下のように書けばよい。

\begin{eqnarray}
\cos x + i \sin x&=&1+ix-\frac{1}{2}x^2-\frac{i}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\frac{i}{5!}x^5-\cdots\\
&=&\sum_{n=0}^{\infty} \frac{i^n}{n!}x^n
\end{eqnarray}
各項にi^nがかかっていると考えることで、上記2つの違いを同時に説明できるのである。

 

例えばn=3の時に足される項は、 \displaystyle \frac{i^3}{3!}x^3=-\frac{i}{3!}x^3であり、n=4の時に足される項は、 \displaystyle \frac{i^4}{4!}x^4= (-1)\times (-1)\times \frac{1}{4!}x^4=\frac{1}{4!}x^4である。いずれも上式と一致していることが分かる。

 

 e^{ix}マクローリン展開

他にもこのようにマクローリン展開できる関数があるだろうか?ここで新たにe^{ix}という関数を考える。指数関数の指数部分には実数のみが用いられていたが、これを虚数複素数にも拡張するのである。

 

以下、定義通りにf(x)=e^{ix}マクローリン展開を実行する。

 

f(x)=e^{ix}微分してx=0を代入し、f^{(n)}(0)を求める。

まずf(0)=e^{i0}=1である。

 

一階微分

\begin{eqnarray}
f'(x)&=&i e^{ix}\\
f'(0)&=&i
\end{eqnarray}

 

二階微分

\begin{eqnarray}
f''(x)&=&i^2e^{ix}=-e^{ix}\\
f''(0)&=&-1\\
\end{eqnarray}

 

三階微分 
\begin{eqnarray}
f'''(x)&=&-i e^{ix}\\
f'''(0)&=&-i\\
\end{eqnarray}

 

四階微分 
\begin{eqnarray}
f^{(4)}(x)&=&e^{ix}\\
f^{(4)}(0)&=&1\\
\end{eqnarray}

 

計算したf^{(n)}(0)マクローリン展開の式に代入する。

\begin{eqnarray}
f(x)&=&f(0)+f'(0)x+\frac{f''(0)}{2!}x^2+\frac{f'''(0)}{3!}x^3+\frac{f^{(4)}(0)}{4!}x^4+\cdots\\
&=&1+ix-\frac{1}{2!}x^2-\frac{i}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\cdots\\
&=& \sum_{k=0}^\infty \frac{i^n}{k!}x^k
\end{eqnarray}

 \cos x + i\sin xマクローリン展開と全く同じになった。

 

収束半径

e^{ix}マクローリン展開したべき級数収束半径を導出する。

 \displaystyle a_k=\frac{i^k}{k!} \displaystyle a_{k+1}=\frac{i^{k+1}}{(k+1)!}である。これらの値を代入して L=\displaystyle \lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}|}{|{a_k}|}を求める。
 

\begin{eqnarray} \require{cancel}
\lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}|}{|{a_k}|}&=&\lim_{k \to \infty} \frac{ \left| \frac{i^{k+1}}{(k+1)!} \right|}{ \left| \frac{i^k}{k!} \right|}\\
&=&\lim_{k \to \infty} \left| \frac{i^{k+1} k!}{i^k (k+1)! }\right| \\
&=&\lim_{k \to \infty} \left| \frac{i^\xcancel{{k+1}}\cancel{k!}}{\xcancel{i^k} (k+1)\cancel{!} }\right| \\
&=&\lim_{k \to \infty} \left| \frac{ i }{ (k+1) }\right|\\
&=& 0
\end{eqnarray}

 

すなわち、判定値L=0であり、収束半径は \displaystyle \frac{1}{\sqrt{L}}=\frac{1}{0}=\inftyである。

 

これはマクローリン展開の次数が十分大きければ、どのようなxにおいても収束させることができることを意味する。本質的に \displaystyle e^{ix}=1+ix-\frac{1}{2!}x^2-\frac{i}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\cdotsと表してよいのである。

 

すなわち、常に \cos x+i\sin x=e^{ix}と書け、オイラーの公式が導かれた。

e^xのマクローリン展開

概要

基準点をx=0としたテイラー展開は特に有用なことがあり、マクローリン展開と呼ばれる。 e^xマクローリン展開を行う。

 

導出 

f(x)=e^x微分してx=0を代入し、f^{(n)}(0)を求める。

まずf(0)=e^0=1である。

 

一階微分

\begin{eqnarray}
f'(x)&=&e^x\\
f'(0)&=&1\\
\end{eqnarray}

 

二階微分

\begin{eqnarray}
f''(x)&=&e^x\\
f''(0)&=&1\\
\end{eqnarray}

 

三階微分 
\begin{eqnarray}
f'''(x)&=&e^x\\
f'''(0)&=&1\\
\end{eqnarray}

 

四階微分 
\begin{eqnarray}
f^{(4)}(x)&=&e^x\\
f^{(4)}(0)&=&1\\
\end{eqnarray}

 

計算したf^{(n)}(0)マクローリン展開の式に代入する。

\begin{eqnarray}
f(x)&=&f(0)+f'(0)x+\frac{f''(0)}{2!}x^2+\frac{f'''(0)}{3!}x^3+\frac{f^{(4)}(0)}{4!}x^4+\cdots\\
&=&1+x+\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\cdots\\
&=& \sum_{k=0}^\infty \frac{1}{k!}x^k
\end{eqnarray}

 

綺麗にまとまった。

 

収束半径

e^xマクローリン展開したべき級数収束半径を導出する。

 \displaystyle a_k=\frac{1}{k!} \displaystyle a_{k+1}=\frac{1}{(k+1)!}である。これらの値を代入して \displaystyle L=\lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}|}{|{a_k}|}を求める。
 

\begin{eqnarray} \require{cancel}
\lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}|}{|{a_k}|}&=&\lim_{k \to \infty} \frac{ \left| \frac{1}{(k+1)!} \right|}{ \left| \frac{1}{k!} \right|}\\
&=&\lim_{k \to \infty} \left| \frac{k!}{ (k+1)! }\right| \\
&=&\lim_{k \to \infty} \left| \frac{\cancel{k!}}{ (k+1)\cancel{!} }\right| \\
&=&\lim_{k \to \infty} \left| \frac{ 1 }{ (k+1) }\right|\\
&=& 0
\end{eqnarray}

 

 

すなわち、判定値L=0であり、収束半径は \displaystyle \frac{1}{\sqrt{L}}=\frac{1}{0}=\inftyである。

 

これはマクローリン展開の次数が十分大きければ、どのようなxにおいても収束させることができることを意味する。本質的に \displaystyle e^x=1+x+\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\cdotsと表してよいのである。

 

確認

f:id:dai-ig:20190223144551j:plain

 f(x)=e^xマクローリン展開された級数をプロットした。 \displaystyle \lim_{x \to -\infty} e^x0に収束するが、べき級数では次数によって \pm \inftyに発散してしまう。しかし次数が増えると徐々に収束する領域が増えていくことが分かる。これが収束半径\inftyと対応している。

cos xのマクローリン展開

概要

基準点をx=0としたテイラー展開は特に有用なことがあり、マクローリン展開と呼ばれる。 \cos xマクローリン展開を行う。

 

導出 

f(x)=\cos x微分してx=0を代入し、f^{(n)}(0)を求める。

まずf(0)=\cos 0=1である。

 

一階微分

\begin{eqnarray}
f'(x)&=&-\sin x\\
f'(0)&=&0\\
\end{eqnarray}

 

二階微分

\begin{eqnarray}
f''(x)&=&-\cos x\\
f''(0)&=&-1\\
\end{eqnarray}

 

三階微分 
\begin{eqnarray}
f'''(x)&=&\sin x\\
f'''(0)&=&0\\
\end{eqnarray}

 

四階微分 
\begin{eqnarray}
f^{(4)}(x)&=&\cos x\\
f^{(4)}(0)&=&1\\
\end{eqnarray}

 

計算したf^{(n)}(0)マクローリン展開の式に代入する。

\begin{eqnarray}
f(x)&=&f(0)+f'(0)x+\frac{f''(0)}{2!}x^2+\frac{f'''(0)}{3!}x^3+\frac{f^{(4)}(0)}{4!}x^4+\cdots\\
&=&1+0\cdot x+\frac{-1}{2!}\cdot x^2+\frac{0}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\cdots\\
&=&1-\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4-\frac{1}{6!}x^6+\cdots
\end{eqnarray}

 

 a_n=0となる項を飛ばし、nの代わりに新たな変数kを用いて\sumを書き直す。

\begin{eqnarray}
f(x)&=&1-\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4-\frac{1}{6!}x^6+\cdots\\
&=&\sum_{k=0}^{\infty}  \frac{(-1)^{k}}{(2k)!}x^{2k}\\
\end{eqnarray} 

綺麗にまとまった。

 

収束半径

導出式再計算

\cos xマクローリン展開したべき級数収束半径を導出する。しかし、今回は対象が通常のべき級数ではなく、偶数次の項だけを持つべき級数なので、導出式を再計算する必要がある。

 

偶数次べき数列a_k x^{2k}ダランベールの判定式に代入して級数\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty} a_k x^{2k}の収束判定を行う。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
\lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}x^{2k+2}|}{|a_k x^{2k}|}&<&1\\
\lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}x^{\cancel{2k}+2}|}{|a_k \cancel{x^{2k}}|}&<&1\\
\lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}|}{|a_k|}|x^2|&<&1\\
|x^2|\lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}|}{|a_k|}&<&1
\end{eqnarray}

分子と分母のx^{2k}が打ち消し合い、x^2だけが残った。

 

\displaystyle \lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}|}{|a_k|}=Lと置いて両辺をLで割る。Lは絶対値同士の商なので不等号の向きは変わらない。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
|x^2|\lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}|}{|a_k|}&<&1\\
|x^2| L&<&1\\
|x^2| &<&\frac{1}{L}\\
-\frac{1}{\sqrt{L}}<x &<&\frac{1}{\sqrt{L}}\\
\end{eqnarray}

xの取りうる範囲が定まった。収束半径は\displaystyle \frac{1}{\sqrt{L}}と表せる。あとはこの\displaystyle L= \lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}|}{|a_k|}を求めればよい。

 

今回の式への適用

 \displaystyle a_k=\frac{(-1)^{k}}{(2k)!} \displaystyle a_{k+1}=\frac{(-1)^{k+1 }}{[2(k+1)]!}=\frac{(-1)^{k+1 }}{(2k+2)!}である。これらの値を代入してLを求める。
 

\begin{eqnarray} \require{cancel}
\lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}|}{|{a_k}|}&=&\lim_{k \to \infty} \frac{ \left| \frac{(-1)^{k+1 }}{(2k+2)!} \right|}{ \left| \frac{(-1)^{k}}{(2k)!} \right|}\\
&=&\lim_{k \to \infty} \left| \frac{(-1)^{k+1} (2k)! }{ (-1)^{k} (2k+2)! }\right| \\
&=&\lim_{k \to \infty} \left| \frac{(-1)^{\cancel{k}+1} (2k)! }{ \cancel{(-1)^{k}} (2k+2)! }\right| \\
&=&\lim_{k \to \infty} \left| \frac{ -1 }{ (2k+2)(2k+1) }\right|\\
&=& 0
\end{eqnarray}

 

 

すなわち、判定値L=0であり、収束半径は \displaystyle \frac{1}{\sqrt{L}}=\frac{1}{\sqrt{0}}=\inftyである。

 

これはマクローリン展開の次数が十分大きければ、どのようなxにおいても収束させることができることを意味する。本質的に \displaystyle \cos x=1-\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4-\frac{1}{6!}x^6+\cdotsと表してよいのである。

 

確認

f:id:dai-ig:20190211203447j:plain



元の関数f(x)=\cos xと、マクローリン展開した級数を6次と14次まで重ねてプロットした。ln(x+1)のマクローリン展開とは異なり、次数を増加させると収束する領域がどんどん広がっていき、収束半径が無限大であることと対応している。