A4の宇宙

数学と物理をA4ノートに収まる範囲で。

余弦定理の証明(鈍角に対向する辺の場合)

概要

任意の \triangle ABCにおいて、角Cに対向する辺cの長さを \cos Cを用いて表し、以下に表される余弦定理を証明する。

 

\begin{eqnarray}
c^2=a^2+b^2-2ab \cos C
\end{eqnarray}

 

導出

 \angle Cが鋭角の場合を前回やったので、今回は図のように、鈍角の場合を考える。 

f:id:dai-ig:20190420122105j:plain

 

Aから辺aに垂線を引き、補助線としたいが、鋭角の時と異なり辺aとは交わらない。そこで下図のように辺aを延長し、補助線同士の交点をDとする。

f:id:dai-ig:20190420122136j:plain

 \angle \pi-Cと辺bを用いて、上図のように CD=b \cos (\pi-C) AD=b \sin (\pi-C)がわかる。また、 BD=a+CDなので BD=a+b \cos (\pi-C)と表せる。

 

 \sin(\pi-C) \cos(\pi-C)\piが邪魔なので消去したい。下に角度 C\pi-Cの関係を図示する。

f:id:dai-ig:20190428164353j:plain

f:id:dai-ig:20190428164734j:plain

 

これらの図を比較することで、 \sin(\pi-C)=\sin C \cos(\pi-C)=-\cos Cであることが分かる。

 

\triangle ABDcを斜辺とする直角三角形であるので、三平方の定理より以下の関係が成り立つ。

\begin{eqnarray}
c^2&=&[b \sin (\pi-C)]^2 +[a+b\cos (\pi-C)]^2\\
\end{eqnarray}

 

 \piを除去し、右辺を整理する。

\begin{eqnarray}
c^2&=&(b \sin C)^2 +(a-b\cos C)^2\\
&=& b^2 \sin^2 C+a^2-2ab \cos C +b^2 \cos ^2 C\\
&=&a^2+b^2(\sin ^2 C+ \cos ^2 C)-2ab \cos C\\
&=&a^2+b^2-2ab \cos C\\
\end{eqnarray}

 

Cが鈍角の場合にも余弦定理が導かれた。

 

また、 Cが垂直の時、余弦定理は三平方の定理と等しいので証明済みである。そのため、任意のC余弦定理が成り立つことが導かれた。

余弦定理の証明(鋭角に対向する辺の場合)

概要

任意の \triangle ABCにおいて、角Cに対向する辺cの長さを \cos Cを用いて表し、以下に表される余弦定理を証明する。

 

\begin{eqnarray}
c^2=a^2+b^2-2ab \cos C
\end{eqnarray}

 

導出

今回は図のように、 \angle Cが鋭角の場合を考える。

 

f:id:dai-ig:20190415210128j:plain

 

 

Aから辺aに垂線を引き、補助線とする。交点をDとする。

f:id:dai-ig:20190415210938j:plain

 

 \angle Cと辺bを用いて、上図のように CD=b \cos C AD=b \sin Cがわかる。また、 BD=a-CDなので BD=a-b \cos Cと表せる。

 

\triangle ABDcを斜辺とする直角三角形であるので、三平方の定理より以下の関係が成り立つ。

\begin{eqnarray}
c^2&=&(b \sin C)^2 +(a-b\cos C)^2\\
&=& b^2 \sin^2 C+a^2-2ab \cos C +b^2 \cos ^2 C\\
&=&a^2+b^2(\sin ^2 C+ \cos ^2 C)-2ab \cos C\\
&=&a^2+b^2-2ab \cos C\\
\end{eqnarray}

 

 \sin^2 C+\cos^2 C=1を用いて、余弦定理が導かれた。

xが0に近い時のsin xの性質、面積を用いる方法

概要

図のように、半径rの円(緑)と、二つの直角三角形(青、赤)を考える。これらの直角三角形と、切り取られる扇形の面積を比較して、三角関数微分に必要な \displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{\sin x}{x}=1を導出する。

f:id:dai-ig:20190331110542j:plain

 

導出

まず二つの直角三角形と切り取られる扇形の面積を、円の半径rと中心角xを用いて表す。

 

小さな直角三角形の面積S_1

斜辺がrと定まることから底辺と高さを導ける。

f:id:dai-ig:20190331111056j:plain

\begin{eqnarray}
S_1&=&\frac{1}{2}\times r \cos x \times r \sin x\\
&=&\frac{r^2 \sin x \cos x}{2}
\end{eqnarray}

 

切り取られる扇形の面積S_2

円全体の面積\pi r^2に角度の割合 \displaystyle \frac{x}{2 \pi}をかけて求める。

f:id:dai-ig:20190331111125j:plain

\begin{eqnarray}
S_2&=& \pi r^2 \times \frac{x}{2 \pi}\\
&=&\frac{r^2 x}{2}
\end{eqnarray}

 

大きな直角三角形の面積S_3

底辺がrと定まることから斜辺、高さの順に導ける。

f:id:dai-ig:20190331111149j:plain

\begin{eqnarray}
S_3&=&\frac{1}{2} \times r \times \frac{r \sin x}{\cos x}\\
&=&\frac{r^2 \sin x}{2\cos x}
\end{eqnarray}

 

 

図を比較すると明らかに以下の関係が成り立つ。

\begin{eqnarray}
S_1<S_2<S_3
\end{eqnarray}

 

S_1, S_2, S_3に計算した値を代入する。

\begin{eqnarray}
\frac{r^2 \sin x \cos x}{2}<\frac{r^2 x}{2}<\frac{r^2 \sin x}{2\cos x}
\end{eqnarray}

 

共通部分を打ち消す。
\begin{eqnarray} \require{cancel}
\frac{\cancel{r^2} \sin x \cos x}{\cancel{2}}&<&\frac{\cancel{r^2} x}{\cancel{2}}&<&\frac{\cancel{r^2} \sin x }{\cancel{2}\cos x}\\
\sin x \cos x&<&x&<&\frac{\sin x }{\cos x}
\end{eqnarray}

 

全体を\sin xで割る。\sin x \gt 0としているので不等号の向きは変わらない。
\begin{eqnarray}
\cos x&<&\frac{x}{\sin x}&<&\frac{1}{\cos x}
\end{eqnarray}

 

全体の逆数を取る。不等号の向きが逆になる。
\begin{eqnarray}
\frac{1}{\cos x}&>&\frac{\sin x}{x}&>&\cos x
\end{eqnarray}

 

全体の \displaystyle \lim_{x \to 0}を取る。

\begin{eqnarray}
\lim_{x \to 0}\frac{1}{\cos x}&>&\lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x}&>&\lim_{x \to 0}\cos x\\
1&>&\lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x}&>&1
\end{eqnarray}

 

はさみうちの原理により、以下の関係が求められた。

\begin{eqnarray}
\lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x}=1
\end{eqnarray}

 

また \sin x \lt 0の時も、横軸の下側に2つの直角三角形と扇形を考えることができるので、この関係は同様に成り立つ。

xが0に近い時のsin xの性質 マクローリン展開を用いる方法

導出

以前導出した \sin xのマクローリン展開を書き下す。このマクローリン展開は無限の収束半径を持ち、本質的に \sin xと等しいのであった。

\begin{eqnarray} \sin x = x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5-\frac{1}{7!}x^7+\cdots \end{eqnarray}

 x \neq 0として両辺をxで割る。

\begin{eqnarray} \frac{\sin x}{x} = 1-\frac{1}{3!}x^2+\frac{1}{5!}x^4-\frac{1}{7!}x^6+\cdots \end{eqnarray}

両辺の \displaystyle \lim_{x \to 0}を取る。

\begin{eqnarray} \require{cancel} \lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} &=& \lim_{x \to 0} \left( 1-\frac{1}{3!}x^2+\frac{1}{5!}x^4-\frac{1}{7!}x^6+\cdots \right) \newline &=&\lim_{x \to 0} \left( 1-\cancel{\frac{1}{3!}x^2}+\cancel{\frac{1}{5!}x^4}-\cancel{\frac{1}{7!}x^6}+\cancel{\cdots} \right) \newline &=&1 \end{eqnarray}

すなわち、x0にとても近い時、 \displaystyle \frac{\sin x}{x}1に収束する。

しかし、x=0ちょうどの時は、分母と分子が両方とも0になってしまって \displaystyle \frac{\sin x}{x}の値が定まらず、成り立たないことに注意。

この計算に意味あるの?

この計算は、三角関数微分に必要な知識 \displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} =1を導出するためのものである。

しかしよく考えると \sin xマクローリン展開する時点ですでに三角関数微分を使用してしまっているので、循環論法になってしまって意味がない。

そのため多くの場合、扇形の面積弧の長さを用いた幾何的な手法で \displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} =1を導出する。

しかしながら、幾何的な導出こそが循環論法であるとする流派もある。(円の面積をちゃんと計算するために積分が必要だから、そこで \displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} =1を使わないといけないよ派)

その流派では、\sin xは図形と無関係にマクローリン展開形式で定義されることになる。(これは導出ではなく定義なので、三角関数微分は必要ないという理屈) \begin{eqnarray} \sin x = x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5-\frac{1}{7!}x^7+\cdots \end{eqnarray}

この場合、最初に \displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} =1を知ることができるのは今回の手法になるのである。

参考 https://sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/~kawanaka/sinx.pdf

民主主義は三択に弱い

背景

最近ブレグジット問題がアツい。イギリスがEU離脱を決定したものの、その離脱プロセスが決まらず、締め切りだけが迫っている状況なのだ。

 

締め切りが来ると何も決まってないのに強制的にEU離脱となって大混乱を招くという。一体何故こんなことになってしまったのだろうか。

 

以下、モデル化してブレグジット投票の流れを追う。

 

イギリスの有権者3パターン

大体以下の3パターンに分かれている。

  • EU残留派 40%「EUに残留したい、離脱絶対反対!」
  • ソフト離脱派30%「EUからは離脱したいけど、ちゃんと交渉に沿ってやる」
  • ハード離脱派30%「EUから離脱したい!交渉で妥協とかしない!」

 

支持率の数値は適当なので注意。モデル化上、重要な所は以下の2点にある。

  • どの派閥も単独では過半数を取れない
  • 離脱派を合計すると過半数を超える

 

また国民投票と議員による投票があるのだが区別していない。

 

投票

1回目

「イギリスはEUから離脱することにしますか?」

  • EU残留派 40%「No!」
  • ソフト離脱派30%「Yes!」
  • ハード離脱派30%「Yes!」

離脱賛成60%で過半数。離脱が決定した。次は具体的な方針を決めよう。

 

2回目

EUと妥協点を探って離脱する計画を作りました。でもEUの影響は残るかも…これで良い?」

  • EU残留派 40%「離脱したくないからNo!」
  • ソフト離脱派30%「Yes!」
  • ハード離脱派30%「手緩いからNo!」

反対70%で過半数。ソフトブレグジットしないことが決定した。

 

3回目

「じゃあ問答無用で離脱することにする?」

  • EU残留派 40%「離脱しないって言ってるだろ!No!」
  • ソフト離脱派30%「無茶苦茶すぎるだろ!No!」
  • ハード離脱派30%「Yes!」

反対70%で過半数。ハードブレグジットしないことが決定した。

 

4回目

「分かった。ホントは離脱したくなかったんだろ?国民投票をもう一度やろう?」

  • EU残留派 40%「それだ!Yes!」
  • ソフト離脱派30%「No!」
  • ハード離脱派30%「No!」

反対60%で過半数。再投票しないことが決定した。

 

なぜこんなことに…

つまり3択で、自分の意見とぴったりでないとNo投票する、というルールで投票を行うと、全て否決されてしまって永遠に何の結論も出なくなってしまう。

 

また、今回は3パターンの別れかたが、「強賛成」「弱賛成」「反対」だったことが問題を危険にしている。「賛成派」自体は過半数を超えているので、取り消すこともできずに時間だけが過ぎてしまったのだ。

 

日本の場合

例えば大阪都構想はこれと近い動きをしているが、層の別れ方が異なったのでセーフだった。

  • 「維新の会も大阪都構想も好き」30%
  • 「維新の会は好きだけど都構想は嫌」30%
  • 「維新の会も都構想も嫌」40%

の三層がいるので、

 

維新の会が選挙で勝つ!

大阪都構想や!

アカン!票が足らん!これは解散しかない…

解散後の選挙でまた維新の会が勝つ!

これは大阪都構想待ったなしや!

 

の繰り返しが発生してしまう。維新の会は普通に人気があるので、都構想投票に失敗した後も選挙で勝ってしまうのだった。

 

しかしこれは都構想賛成派が過半数いないため、つまり「賛成」「弱反対」「強反対」に分かれたため、グルグル回るだけでイギリスみたいな決定的な問題にはならなかった。

 

最後はどうするのか?

メイ首相(ソフト離脱派)は「相手の思うツボですよ作戦」を取っていくのではないか?

 

残留派には「時間切れになったら結局ハードブレグジットになっちゃいますよ?」

 

ハード離脱派には「このままモタモタしてたら離脱延期しかないですよ。その間に流れが変わって再投票になったりするかも?」

 

と脅しをかけて、ソフト離脱派プランに同意するようプッシュするという作戦なのでは。

 

これがうまく行くかはもう政治家の力量と妥協の世界なのでどうなるのかは俺程度では分からないのだった。(ゲーム理論とかにあるのかも知れないけど)

 

指数表記された三角関数の手触りを確かめる

前回までに、オイラーの公式を用いて三角関数を指数関数形式で表せることを示した。

 

この形式でも三角関数としての性質が保たれていることを、いくつかの代表的な性質から確認する。

 

 \sin x \cos xの指数関数表記を再度書く。

\begin{eqnarray}
\sin x&=&\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}
\end{eqnarray}

 

\begin{eqnarray}
\cos x&=&\frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2}
\end{eqnarray}

 

 

 \sin 0 =0を確かめる。

左辺を変形して右辺を目指す。

\begin{eqnarray}
\sin 0&=&\frac{e^{i0}-e^{-i0}}{2i}\\&=&\frac{1-1}{2i}\\&=&0
\end{eqnarray}

合っている。

 

 

 \cos 0 =1を確かめる。

左辺を変形して右辺を目指す。

\begin{eqnarray}
\cos 0&=&\frac{e^{i0}+e^{-i0}}{2}\\&=&\frac{1+1}{2}\\&=&1
\end{eqnarray}

合っている。

 

 

 \sin^2 x+ \cos^2 x=1を確かめる。

左辺を変形して右辺を目指す。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
\sin^2 x+ \cos^2 x&=&\left(\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}\right)^2+\left(\frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2}\right)^2\\
&=&\frac{e^{2ix}-2+e^{-2ix}}{-4}+\frac{e^{2ix}+2+e^{-2ix}}{4}\\
&=&\frac{\cancel{-e^{2ix}}+2-\xcancel{e^{-2ix}}}{4}+\frac{\cancel{e^{2ix}}+2+\xcancel{e^{-2ix}}}{4}\\
&=&1
\end{eqnarray}

合っている。

 

 

 (\sin x)'=\cos xを確かめる。

左辺を変形して右辺を目指す。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
( \sin x)'&=&\left( \frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i} \right)'\\
&=&\frac{i e^{ix}+i e^{-ix}}{2i}\\
&=&\frac{\cancel{i}e^{ix}+\cancel{i}e^{-ix}}{2\cancel{i}}\\
&=&\frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2}\\
&=& \cos x
\end{eqnarray}

合っている。

 

 

 (\cos x)'=-\sin xを確かめる。

左辺を変形して右辺を目指す。

\begin{eqnarray}
( \cos x)'&=&\left( \frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2} \right)'\\
&=&\frac{i e^{ix}-i e^{-ix}}{2}
\end{eqnarray}

分子と分母にiをかける。

\begin{eqnarray}
(\cos x)'&=&\frac{-e^{ix}+e^{-ix}}{2i}\\
&=&-\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}\\
&=& -\sin x
\end{eqnarray}

合っている。

 

 \sin 2x=2 \sin x \cos xを確かめる。

今回は右辺を変形して左辺を目指す。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
2 \sin x \cos x&=&2 \cdot \frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i} \cdot \frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2}\\
&=&2 \cdot \frac{e^{2ix}-e^{2ix}}{4i}\\
&=&\frac{e^{2ix}-e^{2ix}}{2i}\\
&=&\sin 2x
\end{eqnarray}

合っている。

 

 \sin (a+b)=\sin a\cos b+\cos a \sin bを確かめる。

今回は右辺を変形して左辺を目指す。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
\sin a\cos b+\cos a \sin b &=&\frac{e^{ia}-e^{-ia}}{2i} \cdot \frac{e^{ib}+e^{-ib}}{2}+\frac{e^{ia}+e^{-ia}}{2} \cdot \frac{e^{ib}-e^{-ib}}{2i}\\
&=&\frac{e^{i(a+b)}-\cancel{e^{i(b-a)}}+\xcancel{e^{i(a-b)}}-e^{-i(a+b)}}{4i}+\frac{e^{i(a+b)}-\xcancel{e^{i(a-b)}}+\cancel{e^{i(b-a)}}-e^{-i(a+b)}}{4i}\\
&=&\frac{2e^{i(a+b)}-2e^{-i(a+b)}}{4i}\\
&=&\frac{e^{i(a+b)}-e^{-i(a+b)}}{2i}\\
&=&\sin (a+b)
\end{eqnarray}

合っている。

 

代表的な三角関数の性質が、指数関数表記でも成り立っていることが確かめられた。

オイラーの公式から導かれる三角関数の記法

概要

オイラーの公式を受け入れると三角関数を別の形式で表せる。

 

導出

オイラーの公式を再度書く。

\begin{eqnarray}
e^{ix}=\cos x+i\sin x
\end{eqnarray}

 

式中のx-xに置き換えてみる。 

\begin{eqnarray}
e^{-ix}&=&\cos (-x)+i\sin (-x)\\
&=&\cos x-i\sin x
\end{eqnarray}

 \cos xは偶関数なので変化しない。 \sin xは奇関数なのでマイナスが付く。

 

マクローリン展開版の表記でも確認しておく。まず元の形。

\begin{eqnarray}
e^{ix}&=&\left(1-\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4-\cdots\right)+i\left(x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5-\cdots\right)\\
\end{eqnarray}

 

式中のx-xに置き換えてみる。

\begin{eqnarray}
e^{-ix}&=&\left(1-\frac{1}{2!}(-x)^2+\frac{1}{4!}(-x)^4-\cdots\right)+i\left((-x)-\frac{1}{3!}(-x)^3+\frac{1}{5!}(-x)^5-\cdots\right)\\
&=&\left(1-\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4-\cdots\right)-i\left(x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5-\cdots\right)
\end{eqnarray}

実部にはxが偶数次の項しかないので変化しない。虚部には奇数次の項しかないので結局虚部全体にマイナスが付き、同じ結果が得られた。

 

この結果を踏まえてe^{ix}+e^{-ix}を計算する。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
e^{ix}+e^{-ix}&=&(\cos x+ i \sin x)+(\cos x-i\sin x)\\
&=&\cos x+ \cancel{i \sin x} + \cos x-\cancel{i\sin x}\\
&=& 2 \cos x
\end{eqnarray} 

 

 \cos xについて式変形する。

\begin{eqnarray}
2 \cos x&=&e^{ix}+e^{-ix}\\
\cos x&=&\frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2}
\end{eqnarray}

\cos xの新たな記法が導かれた。

 

 

同様にe^{ix}-e^{-ix}を計算する。

\begin{eqnarray} \require{cancel}
e^{ix}-e^{-ix}&=&(\cos x+ i \sin x)-(\cos x-i\sin x)\\
&=&\cancel{\cos x}+ i \sin x -  \cancel{\cos x}+i\sin x\\
&=& 2i \sin x
\end{eqnarray} 

 

 \sin xについて式変形する。

\begin{eqnarray}
2i \sin x&=&e^{ix}-e^{-ix}\\
\sin x&=&\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}
\end{eqnarray}

\sin xの新たな記法が導かれた。