自由落下運動 空気抵抗あり1
物体が落下する時、どのような速度でどのような軌道をたどるかを微分方程式から導く。空気抵抗なしバージョンは以前やったので、今回はありバージョンを計算する。
まずは運動方程式を書く。物体の質量を、物体の加速度を、物体に働く力をとおく。
\begin{eqnarray}
ma=f
\end{eqnarray}
物体には重力による引力と空気抵抗が働くとする。重力加速度をとすると、上方向をとして引力はである。空気抵抗力は速度に比例して強くなり、その比例係数をと置く。これらを右辺のに代入する。
\begin{eqnarray}
ma&=&-mg-kv\\
\end{eqnarray}
空気抵抗力はの反対向きに働くのでマイナスがついている。が方向の時に抵抗力は方向、が方向の時に抵抗力は方向ということである。
加速度は速度を時間で微分したものである。をで1回微分したものをと書こう。空気抵抗なしバージョンではを基準にしたが、今回はを基準にした方が後々分かりやすい。
\begin{eqnarray}
m\dot{v}&=&-mg-kv\\
\end{eqnarray}
これで解きたい微分方程式ができた。
空気抵抗なしバージョンでは両辺を直接で積分したが、今回は両辺にの要素が残っているため、その方法は使えない。変数分離法を使用して解く。
まず両辺をで割る。(の場合は後述)
\begin{eqnarray}
\frac{m}{-mg-kv}\dot{v}&=&1
\end{eqnarray}
両辺をで積分すると、左辺ではが打ち消し合ってでの積分に変化する。
\begin{eqnarray} \require{cancel}
\int{\frac{m}{-mg-kv}\dot{v}}dt&=&\int dt\\
m\int{\frac{1}{-mg-kv}\frac{dv}{\cancel{dt}}\cancel{dt}}&=&\int dt\\
-\frac{m}{k} \ln|-mg-kv|&=&t+C_1
\end{eqnarray}
積分が完了した。は任意定数。
指数関数として書き直す。
\begin{eqnarray} \require{cancel}
-\frac{m}{k} \ln|-mg-kv|&=&t+C_1\\
\ln|-mg-kv|&=&-\frac{kt}{m}-\frac{kC_1}{m}\\
-mg-kv&=&\pm\exp{\left(-\frac{kt}{m}-\frac{kC_1}{m}\right)}\\
\end{eqnarray}
変形を進めての式に直す。
\begin{eqnarray} \require{cancel}
-mg-kv&=&\pm\exp{\left(-\frac{kt}{m}\right)} \exp{\left(-\frac{kC_1}{m}\right)}\\
-kv&=&\pm\exp{\left(-\frac{kt}{m}\right)} \exp{\left(-\frac{kC_1}{m}\right)}+mg\\
v&=&\frac{\mp1}{k}\exp{\left(-\frac{kt}{m}\right)} \exp{\left(-\frac{kC_1}{m}\right)}-\frac{mg}{k}\\
v&=&C_1\exp{\left(-\frac{kt}{m}\right)}-\frac{mg}{k}\\
\end{eqnarray}
任意定数を再度にまとめて、速度の一般解が求められた。
(の時、であり、これはの時に等しいので、一般解に含まれてる。)
ここで、を十分大きくすると、右辺第一項はになってしまい、は定数であるに収束する。これは空気抵抗により、速度が終端速度で安定することに対応している。
この一般解からは他にも様々なことが分かる。が大きいほど減速が早く、終端速度も遅いことや、が大きいほど減速されにくく、終端速度も高速なことなどである。これらは実感としては明らかに正しいが、その正しさが式の中にシンプルな形で現れている。