A4の宇宙

数学と物理をA4ノートに収まる範囲で。

ln(x+1)のマクローリン展開と収束半径 その1

概要

基準点をx=0としたテイラー展開は特に有用なことがあり、マクローリン展開と呼ばれる。 \ln(x+1)マクローリン展開を用いて、収束半径の概念を説明する。

 

導出 

x=0を基準にしてf(x)=\ln(x+1)テイラー展開を行う。

 

f(x)微分してx=0を代入し、f^{(n)}(0)を求める。

まずf(0)=\ln1=0である。

 

一階微分

\begin{eqnarray}
f'(x)&=&\frac{1}{x+1}(x+1)'\\
&=&\frac{1}{x+1}\\
f'(0)&=&1\\
\end{eqnarray}

 

二階微分

\begin{eqnarray}
f''(x)&=&-\frac{1}{(x+1)^2}(x+1)'\\
&=&-\frac{1}{(x+1)^2}\\
f''(0)&=&-1\\
\end{eqnarray}

 

三階微分 
\begin{eqnarray}
f'''(x)&=&\frac{2 \cdot 1}{(x+1)^3}(x+1)'\\
&=&\frac{2!}{(x+1)^3}\\
f'''(0)&=&2!\\
\end{eqnarray}

 

四階微分 
\begin{eqnarray}
f''''(x)&=&-\frac{3\cdot2\cdot1}{(x+1)^4}(x+1)'\\
&=&-\frac{3!}{(x+1)^4}\\
f''''(0)&=&-3!\\
\end{eqnarray}

 

n微分 
\begin{eqnarray}
f^{(n)}(x)&=&\frac{(-1)^{n-1} (n-1)!}{(x+1)^n}\\
f^{(n)}(0)&=&(-1)^{n-1} (n-1)!\\
\end{eqnarray}

 

計算したf^{(n)}(0)マクローリン展開の式に代入する。

\begin{eqnarray}
f(x)&=&f(0)+f'(0)x+\frac{1}{2!}f''(0)x^2+\frac{1}{3!}f'''(0)x^3+\frac{1}{4!}f''''(0)x^4+\cdots\\
&=&0+x-\frac{1}{2}x^2+\frac{2!}{3!}x^3-\frac{3!}{4!}x^4+\cdots\\
&=&x-\frac{1}{2}x^2+\frac{1}{3}x^3-\frac{1}{4}x^4+\cdots\\
&=&\sum_{n=1}^{\infty}  \frac{(-1)^{n-1}}{n}x^n
\end{eqnarray}

綺麗にまとまった。

 

確認

元の関数 f(x)=\ln(x+1)マクローリン展開された \displaystyle f(x) = \sum_{n=1}^{5} \frac{(-1)^{n-1}}{n}x^nおよび \displaystyle f(x) = \sum_{n=1}^{13} \frac{(-1)^{n-1}}{n}x^nを重ねてプロットしてみる。無限次までは扱えないので5次までと、13次までの2つの和を用いた。

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2つのマクローリン展開のグラフは -1 \lt x \lt 1の領域でよい近似が得られているが、 x \lt -1 x \gt 1では明らかに発散している。また、これはテイラー展開の次数を増やしてもよくならず、むしろ急激に発散するようになることが分かる。

 

このテイラー級数が収束する領域 -1 \lt x \lt 1テイラー展開が成り立つ領域を表し、x=0を中心として\pm1の幅を持つことから、「収束半径が1である」と呼ぶ。

 

また、x=\pm1ちょうどで収束するかどうかはまだ明らかでないことに注意。

 

この収束半径はダランベールの判定法で導出可能である。次回、その計算をやっていく。