x が0に近い時のsin x の性質 弧の長さを用いる方法
循環論法
以前、扇型の面積を挟み打ちしてを導出した。この手法は分かりやすいが、実は循環論法の問題がある。
半径を持つ円の面積が
であることは定義されたことや自明なことではない。証明するには三角関数の積分が必要であり、その際に既に
を知っている必要があるためである。
対策
円周率の定義は円の直径
と円周長の比であるので、半径
を持つ円の円周長が
なことは定義されたこととして使用しても良い。これを出発点として
を導出すれば循環論法を回避できる。
導出
正
角形
半径の円に内接する正
角形と外接する正
角形を考える。下図に
の場合を示した。
ここで、内接する正角形、円、外接する正
角形の外周の長さをそれぞれ
、
、
とする。これらの大小関係を比較すると、明らかに以下の関係が成り立つ。
\begin{eqnarray} A \lt B \lt C \end{eqnarray}
下図で色をつけた3本の線の長さに注目する。
これらはそれぞれ、
、
を
で割ったものなので、大小関係は維持される。
\begin{eqnarray}
\frac{ A }{2n }< \frac{ B }{ 2n } < \frac{ C }{ 2n }
\end{eqnarray}
これらの3本の線の長さをを別の形式で表す。これらが直角三角形の高さまたは弧の長さであることを用いて線の長さを求める。
小さい直角三角形
斜辺がと中心角
から高さが求まる。
\begin{equation}
\frac{ A }{ 2n }=r \sin x
\end{equation}
切り取られる円弧
全体の円周に角度の割合
を掛けた
が弧の長さになる。
\begin{equation} \frac{ B }{ 2n }=rx \end{equation}
大きい直角三角形
今度は底辺がなので、まず斜辺
、次に高さ
が導かれる。
\begin{equation} \frac{ C }{ 2n }=r \frac{ \sin x }{ \cos x } \end{equation}
これらの長さの極限
求めた線の長さを、
、
に代入する。
\begin{equation} r\sin x \lt rx \lt r\frac{ \sin x }{ \cos x } \end{equation}
共通するを打ち消す。
\begin{equation} \sin x \lt x \lt \frac{ \sin x }{ \cos x } \end{equation}
として全体を
で割る。
\begin{equation} 1 < \frac{ x }{ \sin x } < \frac{ 1 }{ \cos x } \end{equation}
全体の逆数をとる。不等号は逆向きになる。 \begin{equation} 1 > \frac{ \sin x }{ x } > \cos x \end{equation}
正角形の対角線は
ラジアンを
等分するので、中心角
は、そのさらに半分で以下のように表せる。
\begin{equation} x=\frac{ 2\pi }{ 2n }=\frac{ \pi }{ n } \end{equation}
ここで、内接、外接する角形を
角形に近づけていく。この時、中心角
は限りなく
に近づいていく。
\begin{equation} \lim_{x \to 0} 1> \lim_{x \to 0}\frac{ \sin x }{ x } > \lim_{x \to 0}\cos x\\ 1> \lim_{x \to 0}\frac{ \sin x }{ x } >1 \end{equation}
挟み打ちの原理よりが導かれた。