A4の宇宙

数学と物理をA4ノートに収まる範囲で。

交代調和級数の収束判定

概要

調和級数の正負が1項ごとに入れ替わる、交代調和級数の収束判定を行う。

全項がプラスの調和級数は無限大に発散してしまったが、これは半分の項がマイナスなので、より収束しやすい級数と言える。

 

導出

足し合わされる数列の一般項をa_kと書き、級数を代数的に表す。

\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{\infty} a_k&=&1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\cdots\\
&=&\sum_{k=1}^{\infty} \frac{(-1)^{k - 1}}{k}
\end{eqnarray}

 

1項目からn項目までの部分和を実際にプロットしてみると図のようになり、nの増加に伴って明らかにある値に収束していく。この収束値はいくつになるだろうか。

f:id:dai-ig:20190124114607j:plain

 

収束値を導出するにあたって(-1)^{k-1}の部分が邪魔なので、級数を以下のように変形する。最後に \displaystyle \lim_{n \to \infty}をとれば目的の級数が得られる。

\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n} \frac{(-1)^{k - 1}}{k} = \sum_{k=1}^n \frac{1}{n+k}
\end{eqnarray}

 

この式変形は以下のようになる。左辺を式変形して右辺を目指す。

 \displaystyle 2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}を左辺に足し、そして引いても合計は変化しない。(なぜこんな変形をするかは後で分かる)

\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}&=&\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}+\underline{2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}-2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}}
\end{eqnarray}

 

カッコで右辺2項目までをくくり、右辺3項目を約分する。
\begin{eqnarray} \require{cancel}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}&=&\left(\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}+2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}\right)-2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}\\
&=&\left(\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}+2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}\right)-\cancel{2}\sum_{k=1}^n\frac{1}{\cancel{2}k}\\
&=&\left(\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}+2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}\right)-\sum_{k=1}^n\frac{1}{k}
\end{eqnarray}

 

右辺カッコ内を計算するとどうなるだろうか。

  • 右辺第一項

\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}=\frac{1}{1}-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\cdots\\
\end{eqnarray}

  • 右辺第二項

\begin{eqnarray}
2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}=2\cdot\frac{1}{2}+2\cdot\frac{1}{4}+2\cdot\frac{1}{6}\cdots
\end{eqnarray}

 

これらを辺々足すと、マイナスの項だけをプラスの2倍の項が貫通して、ちょうど調和級数の形になるのである。

  • 合計

\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}+2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}&=&\frac{1}{1}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\cdots\\
&=&\sum_{k=1}^{2n}\frac{1}{k}
\end{eqnarray}

 

計算したカッコの中身を代入する。
\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}&=&\left(\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}+2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}\right)-\sum_{k=1}^n\frac{1}{k}\\
&=&\sum_{k=1}^{2n}\frac{1}{k}-\sum_{k=1}^n\frac{1}{k}\\
\end{eqnarray}

 

この右辺第2項の和は、第1項の和の最初のn項を相殺する。
\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}&=&\sum_{k=1}^{2n}\frac{1}{k}-\sum_{k=1}^n\frac{1}{k}\\
&=&\sum_{k=n+1}^{2n} \frac{1}{k}\\
\end{eqnarray}

 

和を取る領域がk=1からnまでになるように書き直し、式変形が完了した。

\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}&=&\sum_{k=n+1}^{2n} \frac{1}{k}\\
&=&\underline{\sum_{k=1}^n \frac{1}{n+k}}
\end{eqnarray}

 

区分求積法を用いて、変形した式の無限和を計算する。

\begin{eqnarray}
\lim_{n \to \infty}\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{n+k}&=&\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n}\sum_{k=1}^n\frac{1}{1+\frac{k}{n}}\\
&=&\int_0^1\frac{1}{1+x}dx\\
&=&\biggl[\ln{(1+x)}\biggr]^1_0\\
&=&\ln 2\\
&=&0.6931\cdots\\
\end{eqnarray}

収束値が求められた。最初にプロットしたグラフとも整合していることが分かる。

 

交代調和級数を構成する値は全て分数なので明らかに有理数だが、その無限和は無理数である\ln2に収束するのである。