交代調和級数の収束判定
概要
調和級数の正負が1項ごとに入れ替わる、交代調和級数の収束判定を行う。
全項がプラスの調和級数は無限大に発散してしまったが、これは半分の項がマイナスなので、より収束しやすい級数と言える。
導出
足し合わされる数列の一般項をと書き、級数を代数的に表す。
\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{\infty} a_k&=&1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\cdots\\
&=&\sum_{k=1}^{\infty} \frac{(-1)^{k - 1}}{k}
\end{eqnarray}
1項目から項目までの部分和を実際にプロットしてみると図のようになり、の増加に伴って明らかにある値に収束していく。この収束値はいくつになるだろうか。
収束値を導出するにあたっての部分が邪魔なので、級数を以下のように変形する。最後にをとれば目的の級数が得られる。
\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n} \frac{(-1)^{k - 1}}{k} = \sum_{k=1}^n \frac{1}{n+k}
\end{eqnarray}
この式変形は以下のようになる。左辺を式変形して右辺を目指す。
を左辺に足し、そして引いても合計は変化しない。(なぜこんな変形をするかは後で分かる)
\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}&=&\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}+\underline{2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}-2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}}
\end{eqnarray}
カッコで右辺2項目までをくくり、右辺3項目を約分する。
\begin{eqnarray} \require{cancel}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}&=&\left(\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}+2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}\right)-2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}\\
&=&\left(\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}+2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}\right)-\cancel{2}\sum_{k=1}^n\frac{1}{\cancel{2}k}\\
&=&\left(\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}+2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}\right)-\sum_{k=1}^n\frac{1}{k}
\end{eqnarray}
右辺カッコ内を計算するとどうなるだろうか。
- 右辺第一項
\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}=\frac{1}{1}-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\cdots\\
\end{eqnarray}
- 右辺第二項
\begin{eqnarray}
2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}=2\cdot\frac{1}{2}+2\cdot\frac{1}{4}+2\cdot\frac{1}{6}\cdots
\end{eqnarray}
これらを辺々足すと、マイナスの項だけをプラスの2倍の項が貫通して、ちょうど調和級数の形になるのである。
- 合計
\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}+2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}&=&\frac{1}{1}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\cdots\\
&=&\sum_{k=1}^{2n}\frac{1}{k}
\end{eqnarray}
計算したカッコの中身を代入する。
\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}&=&\left(\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}+2\sum_{k=1}^n\frac{1}{2k}\right)-\sum_{k=1}^n\frac{1}{k}\\
&=&\sum_{k=1}^{2n}\frac{1}{k}-\sum_{k=1}^n\frac{1}{k}\\
\end{eqnarray}
この右辺第2項の和は、第1項の和の最初の項を相殺する。
\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}&=&\sum_{k=1}^{2n}\frac{1}{k}-\sum_{k=1}^n\frac{1}{k}\\
&=&\sum_{k=n+1}^{2n} \frac{1}{k}\\
\end{eqnarray}
和を取る領域がからまでになるように書き直し、式変形が完了した。
\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k - 1}}{k}&=&\sum_{k=n+1}^{2n} \frac{1}{k}\\
&=&\underline{\sum_{k=1}^n \frac{1}{n+k}}
\end{eqnarray}
区分求積法を用いて、変形した式の無限和を計算する。
\begin{eqnarray}
\lim_{n \to \infty}\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{n+k}&=&\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n}\sum_{k=1}^n\frac{1}{1+\frac{k}{n}}\\
&=&\int_0^1\frac{1}{1+x}dx\\
&=&\biggl[\ln{(1+x)}\biggr]^1_0\\
&=&\ln 2\\
&=&0.6931\cdots\\
\end{eqnarray}
収束値が求められた。最初にプロットしたグラフとも整合していることが分かる。