A4の宇宙

数学と物理をA4ノートに収まる範囲で。

オイラーの公式

概要

これまでに\sin x \cos xマクローリン展開を導出してきた。

 

 \sin xマクローリン展開
\begin{eqnarray}
\displaystyle \sin x=x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5-\frac{1}{7!}x^7+\cdots
\end{eqnarray}

 \cos xマクローリン展開 
\begin{eqnarray}
\displaystyle \cos x=1-\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4-\frac{1}{6!}x^6+\cdots
\end{eqnarray}

 

これらを用いてオイラーの公式 e^{ix}=\cos x+ i \sin xを導く。

 

導出 

 \cos x + i \sin xマクローリン展開

これらを用いて複素数平面の極座標表示、 \cos x+ i \sin xを書き直してみる。ここでi虚数単位、すなわち2乗すると-1になる数である。

\begin{eqnarray}
\cos x + i \sin x&=&\left(1-\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4-\cdots\right)+i\left(x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5-\cdots\right)\\
&=&1+ix-\frac{1}{2}x^2-\frac{i}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\frac{i}{5!}x^5-\cdots
\end{eqnarray}

実数と虚数を区別せず、昇べきの順に並べなおした。

 

この形は以下に再掲するe^xマクローリン展開によく似ている。

\begin{eqnarray}
\displaystyle e^x&=&1+x+\frac{1}{2}x^2+\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\frac{1}{5!}x^5+\cdots\\
&=&\sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{n!}x^n
\end{eqnarray}

 

しかし全く同じではない。 \cos x + i \sin xの方では、

  1. 2項ごとに項の正負が入れ替わっている。
  2. xが奇数次の項に虚数単位iが掛かっている。

という2つの違いがあることが分かる。

 

しかし、結局これらは同じことを説明している。すなわち以下のように書けばよい。

\begin{eqnarray}
\cos x + i \sin x&=&1+ix-\frac{1}{2}x^2-\frac{i}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\frac{i}{5!}x^5-\cdots\\
&=&\sum_{n=0}^{\infty} \frac{i^n}{n!}x^n
\end{eqnarray}
各項にi^nがかかっていると考えることで、上記2つの違いを同時に説明できるのである。

 

例えばn=3の時に足される項は、 \displaystyle \frac{i^3}{3!}x^3=-\frac{i}{3!}x^3であり、n=4の時に足される項は、 \displaystyle \frac{i^4}{4!}x^4= (-1)\times (-1)\times \frac{1}{4!}x^4=\frac{1}{4!}x^4である。いずれも上式と一致していることが分かる。

 

 e^{ix}マクローリン展開

他にもこのようにマクローリン展開できる関数があるだろうか?ここで新たにe^{ix}という関数を考える。指数関数の指数部分には実数のみが用いられていたが、これを虚数複素数にも拡張するのである。

 

以下、定義通りにf(x)=e^{ix}マクローリン展開を実行する。

 

f(x)=e^{ix}微分してx=0を代入し、f^{(n)}(0)を求める。

まずf(0)=e^{i0}=1である。

 

一階微分

\begin{eqnarray}
f'(x)&=&i e^{ix}\\
f'(0)&=&i
\end{eqnarray}

 

二階微分

\begin{eqnarray}
f''(x)&=&i^2e^{ix}=-e^{ix}\\
f''(0)&=&-1\\
\end{eqnarray}

 

三階微分 
\begin{eqnarray}
f'''(x)&=&-i e^{ix}\\
f'''(0)&=&-i\\
\end{eqnarray}

 

四階微分 
\begin{eqnarray}
f^{(4)}(x)&=&e^{ix}\\
f^{(4)}(0)&=&1\\
\end{eqnarray}

 

計算したf^{(n)}(0)マクローリン展開の式に代入する。

\begin{eqnarray}
f(x)&=&f(0)+f'(0)x+\frac{f''(0)}{2!}x^2+\frac{f'''(0)}{3!}x^3+\frac{f^{(4)}(0)}{4!}x^4+\cdots\\
&=&1+ix-\frac{1}{2!}x^2-\frac{i}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\cdots\\
&=& \sum_{k=0}^\infty \frac{i^n}{k!}x^k
\end{eqnarray}

 \cos x + i\sin xマクローリン展開と全く同じになった。

 

収束半径

e^{ix}マクローリン展開したべき級数収束半径を導出する。

 \displaystyle a_k=\frac{i^k}{k!} \displaystyle a_{k+1}=\frac{i^{k+1}}{(k+1)!}である。これらの値を代入して L=\displaystyle \lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}|}{|{a_k}|}を求める。
 

\begin{eqnarray} \require{cancel}
\lim_{k \to \infty} \frac{|a_{k+1}|}{|{a_k}|}&=&\lim_{k \to \infty} \frac{ \left| \frac{i^{k+1}}{(k+1)!} \right|}{ \left| \frac{i^k}{k!} \right|}\\
&=&\lim_{k \to \infty} \left| \frac{i^{k+1} k!}{i^k (k+1)! }\right| \\
&=&\lim_{k \to \infty} \left| \frac{i^\xcancel{{k+1}}\cancel{k!}}{\xcancel{i^k} (k+1)\cancel{!} }\right| \\
&=&\lim_{k \to \infty} \left| \frac{ i }{ (k+1) }\right|\\
&=& 0
\end{eqnarray}

 

すなわち、判定値L=0であり、収束半径は \displaystyle \frac{1}{\sqrt{L}}=\frac{1}{0}=\inftyである。

 

これはマクローリン展開の次数が十分大きければ、どのようなxにおいても収束させることができることを意味する。本質的に \displaystyle e^{ix}=1+ix-\frac{1}{2!}x^2-\frac{i}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\cdotsと表してよいのである。

 

すなわち、常に \cos x+i\sin x=e^{ix}と書け、オイラーの公式が導かれた。